真空管雑感

AL4



  安い欧州管を探していた時に,EL8と同じ販売店にあったことと,
  値段が\2000と言うことにより,安さに惹かれて購入しました.
  国内価格で現在でも \3000 程度のようです.

  購入時には安さと,欧州管であることだけが決め手です.
  ヒータは 4v1.75A で,プレート損失は9W,Eb は最大250v です.
  球の規格としては,米国の6F6 や 6V6 同等とされていますが,
  プレート損失では,さらに小型の UZ-41 と同じくらいです.

  ヒーター電力は,AL4 は7W であるのに対して,
  41:2.52W,6V6:2.835W,6F6:4.41W と遙かに大きくなっています.
  見たところ,ヒーターはかなり暗く,温度は低く設定されているようです.


出力は,5極管動作では4.5Wとされていますが,3結シングルでの動作例では,出力1W程度となります.
ちょっと少なく見えますが,能率が 93dB/W-m 位のスピーカなら 1W で十分実用になります.

外観はSTですが,米管とは異なる形状で,膨らみがなかなか魅力的です.
管の下半分は,メタルスプレーによるシールドが施されているものもあります.
多くはガラス面にスートがかけられ,中はあまりよく見えません.

この球を使うにあたっての問題はソケットです.
サイドコンタクトと呼ばれるタイプで,欧州独特,それも,主としてドイツ系の球独特の物です.


  以前,このソケットは入手難で,あってもかなり高価でした.
  ソケットの価格が球よりも高いなんて,笑えない話もありました.
  最近は中国製が安く(\300)出回り,入手には問題が無くなってきました.
  中にはまだ驚くほどの価格のソケットも多く見受けられます.


サイドコンタクトソケットは,まさにドイツ的というか,機械的にもかなり強固です.
球を保持し,電極のコンタクトを取るに留まらず,一度ソケットに挿せば,取り出しが極めて困難,
ガラス部分を持って,無理に取り外そうとすると,ソケットにガタをきたしかねません.
安くはなったのですが,この点では中国製のソケットを使う場合は注意が必要です.

決して,不用意に球をセットしてはいけません!!

そこで,我々アマチュアはこのソケットに一工夫を行い,球の取り外しを容易にする必要が
あります.(B級マニアのアイデアを参照ください)

何もこんなややこしい球を使わなくても,6F6 や 6V6 があるとの意見もあるでしょう.
しかし,この球を使うには,実は極めて重大な理由があるのです.
それは特性,一度 Ep-Ip 特性を見てください.

多極管特性にもその片鱗がしっかり見て取れます.
一定 Eg ごとの電圧・電流値値の線がほぼ等間隔に並んでいます.
三結の時には,まるで測定したのでは無く,定規で線を引いたのかと,
見間違うばかりに等間隔で並んでいます.(ドイツのHPのなかで実測値があります)

故浅野勇氏が魅惑の真空管アンプの中で,まるで古典直熱三極管,と表した理由が,
この特性表を見ると一目瞭然,驚きの特性です.
粗製濫造,おかげで安く使えるようになったのですが,米管とは一線を画する,
欧州管で,まさに面目躍如,と言ったところです.

もう一つ,この球を使うにあたって難点があります.
それはヒーター電圧で,欧州管のご多分に漏れず 4v なんです.
基本的に我が国のトランスは米管を基本に置いていますので,ヒーター電圧は,
2.5v,5v,6.3v,7.5v となっていて,安い電源トランスは,5v と 6.3v しかありません.

しかし,傍熱管ですから,カソードは絶縁分離されたいますので,出力管を2本まとめて,
単にヒータ配線の片側に抵抗によって電圧を下げることが出来ますので比較的簡単です.
直熱管ではこうはいきません,抵抗も1本づつ,しかも両側に分割して入れなければなりません.

基の特性が良いため,簡単な回路で,しかも,無帰還にて,音の良いアンプを作るにはうってつけです.

この球で,アンプを組もうとすると,私は妙なところに拘ってしまいます.
サイドコンタクトの出力管には,前段にも,整流管にもサイドコンタクト管をと考えると,
ちょっと厄介ですが,候補の球はあります.

整流管には,同一形状の AZ1,前段には,2極3極管のEBC3,あるいは,低周波用ペントード,
EF6 の3結あたりが増幅率が 40 程度で低内部抵抗となりますので良さそうです.
高周波用のEF7(EF37)は低周波ノイズが増えますので,ここはやはりオーディオ専用の EF6 です.

球の規格を見ると,オーディオには EF6 を使うように書かれています.
EF7,これは 6SJ7 類似ですが,初期の輸入業者が大量に持ち込んでしまったことが原因で,
未だによく使われていますが,ノイズの点ではやはり専用管を使うべきです.
入手は時々ネット上で売りに出される以外は難しいかもしれませんが,
欧州の業者ならば大量に在庫を持っているはずで,価格も高くはありません.




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