真空管雑感

UY-843



  送信管に分類される球であり,特性的にはUX-10()VT25),
  10Y(VT25A)と同じです.

  形状は 2A3 などと同じ ST16 で,外観はどっしりとしてなかなかのもです.
  ヒーターは 2.5v1.75A の傍熱管です.

  電極はグリッド,プレート共に円筒形で,量産を優先した楕円では無く,
  米管としてはちょっと毛色の変わった形です.
  プレート構造は欧州管に近いといった方が良いかもしれません.
  おそらく,こうしなければ,10 と同じ特性が得られなかったのかもしれません.

  明るく輝く10や10Yと比べて,かなり安価に入手できる(\3000程度)ことから,
  一部のマニヤには結構人気がある球です.
  また,2.5v のヒーターは,昔の電源トランスには必ず設けられていましたので,
  7.5v と比較すると,使いやすいという一面もあります.
  同様に,B 電圧も,380v を使えば難なく取り出せる利点もあります.


しかし,10 と同様に425v も供給して,出力はわずか1.6W しか取れません.
効率の悪いことおびただしいですが,代わりに,直線性は抜群であり,
出てくる音は,当然無帰還で十分実用になるし,むしろその方が良く聞こえます.
傍熱管のおかげでヒータハムの影響はほとんどありません.

最大のネックはUX-10(VT25)と同じで,内部抵抗が高く,
負荷はB 電圧が 425v時で 11kΩ,音質と低ひずみを考えれば,武末氏に依れば無帰還時14kΩ,
これほどの高インピーダンスの出力トランスは,数えるほどしか無く選択の余地がありません.

さらに球の持つ直線性を生かし,低域までの再生を考えると,十分なインダクタンスが必要となり,
その要求を満たす市販トランスは高価とならざるを得ません.
これではいくら出力管が安くても,結局アンプには費用が掛かってしまいます.

かと言って,7kΩの出力トランスの4Ω端子に8ΩSPを繋いで,
負荷抵抗値を見かけだけ合わせても,インダクタンスが小さく低域が減衰してしまいます.
せっかくの球の良さが失われてしまいます.

そこまでの高価な出力トランスを使うならば,10や10Yを使った方が良さそうです.
ならば.UV-10 と UY-843 を共用にすればとなりますが,ソケットが UX と UY です.

最近市販の UX-10用キット製品に使われていた出力トランス SEL製 14kΩ が売りに出されました.
これならばなんとか使えるかなと思いますが,詳細なトランスデーターは公表されていませんので,
音はご自分で確認するしかありません.

電源トランスですが,高圧のプレート電圧とバイアス分を入れると,
電源には少なくとも470v以上が必要ですが,電流は僅か50mAも有れば事足ります.
最近の小容量電源トランスはB電源用のタップには高いモノが少なくなってきましたが,
これは,中古品を探せば結構使える物が安くあります.

昔の製品にはB電圧用として,350〜385vのタップを持つトランスが普通でした.
しかも,これらのトランスには2.5vヒータ巻き線の付いているモノもあります.
ジャンク箱をかき回してこのようなトランスを引っ張り出せば,有効利用ができます.

さらに,前段をカソフォロとすれば,3W の出力も難なく得られます.
もっとも,この程度のパワー差(3dB)は実際には聴感上ほとんどありませんし,
あえてパワー増加を必要とすることもないでしょう.





EL3Nへ



真空管雑感へ

ホームへ