言いたい放題

送信管 


真空管は大別すると受信管と送信管になります.これ以外に工業用もありますが、
アマチュアにはそれほど馴染みがありません.3C33(アップルチューブ)位でしょうか.
  ちなみに,工業用と通信測定用は異なります.
ここ数年間に,送信管,とりわけトリタンフィラメントを持つ三極管が良く雑誌に取り上げられてきました.

消耗品である真空管は,年々少なくなり入手難になるのは致し方のないところです.
名出力管と称されるような直熱三極管などは,まるで宝石のごとき値段です.
これら名出力管に変わって入手の楽な一部は「一見」(実は相当異なる)類似管として,
一躍脚光を浴びたのが直熱三極送信管です。

この送信管のオーディオアンプへの応用の歴史は結構古いようです.
所長もアンプの自作を始めた当初、浅野勇氏の「魅惑の真空管アンプ」で、
真空管の歴史を紐解いている部分にて、UY-10 を知りました。

煌々と光るフィラメントに魅せられ、10、801 を購入しましたが、500v〜700v 近い電源電圧を
要するにもかかわらず,出力が 1.6W〜3W のため、日の目を見ていません。

そうこうする内に、武末一馬氏がカソフォロにより、801 で 8W を絞り出してからは
こりゃぁすごい!早速造らなくっちゃ!となりました。
動きの遅い所長を尻目に、友人の方々では,すぐに,数台が動き始めました。

聴いてみると、これがなかなか良い!独特の澄み切った高音が魅力です。
そのうち、211 や RS237 まで造り始めました。
211 は、何と言うか、とてつもない音というか、P610 の口径が 30cm になったのかと思うような音でした。
RS237 は 211 とは異なり、同じトリタンでも実に静かなアンプでした。
これは素晴らしい!と感じさせる音が出ていました。

フィラメントは明るくありませんが,AT20,LK4110 なども誠に素晴らしい!

ところが,UY-841 や 811A まで出てきて,これが結構もて囃されるにいたって,
だんだんと,疑問がわき上がってきました.
どう聴いても,無帰還では良い音には聞こえません!
何か耳に引っかかる音に聞こえるのは私だけなのでしょうか.

10,801,211,AT20, LK4110 などと 841,811A などをオーディオアンプ使用時の差異が何かと言えば,
前者は A1 級が基本であり,少なくとも,小出力時は A1 級です.
後者は初めから,つまり,小出力時においても A2 級です.
どうもこのあたりが耳に引っかかる音に影響をしているように思えて仕方がありません.



Ep - Ip 特性曲線をご覧ください.左が UX-10 で,右が 811A です. グリッド電圧は,10 が −90v 〜+20v までで,見事に揃っていますが, 811A は +0v 〜 +100v までですが線はあまり揃っているとは言えません. 送信管としては本来,特性が揃っている必要はないようです・・・. このあたりが原因ではないかと思っています. 送信管が Audio Amp に向かない理由の一つはその内部抵抗です. μが 30 程度の 841 でも内部抵抗は 40〜63kΩです.つまり,5極管と同じ値ですよ! これじゃぁ,よほど1次インダクタンスの大きい出力トランスでなければ, まともな音は出ません.大量の NFB をかければ別ですけど. ましてや,μが 144 もある 811A では手の施しようがないですね. ところが,すぐに乗りやすい性格の所長は,送信管ブームに遅れまじと SV811-10 を購入しました. さすがに 811A などのTop-Plate 管,しかも 500v 以上で剥き出しの高圧は,家庭用には不適合ですので, シングルエンド管で,A1 級・A2 級いずれでも使えるようにと考慮はしたつもりです. SV811-10 の内部抵抗は 2500Ω,もちろん,Audio用で,無帰還使用が出来ます. 購入した後で,811A の音を聴きました.・・・馬鹿だなぁと我ながら呆れます. 聴いてから買えよっ!と思いました.そそっかしさは治らないようです. 慰めには,SV8911-10 ならば,811A とは比較にならないくらい特性は良いはずですけど. μ=144 の811A よりは SV811-10 は μ=10 ですので A 級での使用には向いているとはいえ, この手の送信管を低圧・低電流で使うと,ボケボケの音になった経験がありますので, まともな音を出すためには,A1 級の場合,必要とする電源は巨大にならざるを得ません. 多少小さな電源となるかも知れない,A2 では,出てくる音は 6AC5 と同じですっ!我が馬の耳には! 6AC5 ならば,大きさ・重量・費用すべてが数分の一で済みますし,安全性では比較になりません. 6AC5-Single も無帰還ではどうやってもかなりひどい特性です.(12cm口径以下のSP用:ラジオ用ですね) P610 などで聞くと悲しくなります. この程度の音に莫大な費用・労力をかける気がしれません. ウゥゥゥ,SV811-10 をどうしましょ.A1 で使うにしても,電源だけで 5〜6kg を超えそう. なんてこった!


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