言いたい放題

欧州系の多極管


 故浅野勇氏が,完結編「魅惑の真空管アンプ」で,PEN45(英国製多極管)の三結は,
名パワー管として有名な,UX-45 に相通じるものがある,と書いています.

  しかし,私は当初,何が「相通じる」のか解らず,
浅野氏は「何をもって」こう言ってるのか理解しかねていました.
  まさか,プレート電流がほぼ同じというような,単純で馬鹿馬鹿しい理由とは
氏の見識から思えませんし.

  <<しかしである>>,たまたま入手したEL11(独テレフンケン)の特性曲線を探している時,
偶然にも,その実測三結データも発見しました.

  出力的に,ほぼ同等管と言われている,米国系の 6V6 の三結特性曲線は,プレート
電圧が高くなる(つまり,バイアス電圧が深くなる)に従い,特性曲線の立ち上がりが
悪くなり,俗に言われる「曲線が寝てくる」,と共に,定バイアス電圧差での
特性曲線の間隔が狭くなる,言い換えれば,直線性が悪いと言うことです.

  つまりは,あまり良い特性ではない. 国産系の6V6も同様であるが,おおむね,
米国系の多極管の三結データは,この様な同一傾向です.

 ところが,EL11,(AL4 やEL3N や PEN45 も同等管である),この三結データの
特性曲線間隔は,古典直熱三極管と同じで,等間隔,かつ鋭い立ち上がり
を示しています.

  この特性を見て,浅野勇氏が UX-45 と似ていると評した根拠が理解できました.まさに
「目から鱗」でした.

  この後に,多極管での特性を見ると,飽和特性の曲線になるのは当然米国系と同じ
であるが,バイアスが深くなるに従い,間隔が狭まる米国系の特性とは異なり,間隔は
あまり変化していません.

納得!・・うーーん・・本当に納得!

  一概に,欧州の技術レベルが高いとは言えないかもしれないが,UX-45 と UX-50 
に時代的に対応するのが,PX4 と PX25 とすると,その技術レベル差は一目瞭然です.
明らかに,1クラス上位の技術です.


  基本に忠実に,かつ,丁寧に作った球と,大衆向けに粗製乱造した球の差があります.

  欧州系多極管の三結アンプを作ろう! 

粗製乱造・安かろう・悪かろうの米製多極管への興味はどこかへ飛んでいってしまいます.

  その前に,欧州系古典多極管を,その値段が安い間に入手しよう!

6L6G などと比較すると,その性能(音)からは信じられないほどに安く売っています.

これまで入手について問題になっていたソケットですが,最近は中国製ですが,
安く,かつ,簡単に入手ができるようになりました.
サイドコンタクトは\300ですし,UFなどは\200といった調子です.
ただし,使う前にちょっとだけ工夫が要りますが.・・・  

  蛇足?・・要らぬお節介?・・,欧州系古典多極管ですが,購入をお勧めできるのは,
EL系列では,EL12,EL33以前の球までです.

1950年代以降の球は,例えば,EL12Nなど,耐圧は上がっていますが,米球と同様であり
特性も音も良くないようです.

  購入する時は十分ご注意を!

と,ここまでは,欧州管賛歌となりますが,問題はこれらの球と組み合わせる前段と,
整流管です.納得できる球は,なかなか見つかりません.

出力管の開発と共に,組み合わされるべき周辺の球も開発されているのが普通と思いますが,
40〜50年の歳月により,それらの球を入手することはかなり困難となっています.
特に,負荷の大きい整流管は残存数が限られています.

唯一の救いは,レギュレーションの問題から,電源は半導体でという方がいることです.
そういう方が増えてくれれば,我々こだわり派は助かります.

そう! 球のある今のうちです. これらの球を入手するのは.




アンプの出力へ



言いたい放題へ

ホームへ