NFB 技術が Western-Electric 社により開発・発展されて,低歪み増幅が実用化されました.
この技術のおかげで,安価に,且つ大量に増幅装置が供給可能になりました.
いわゆる Hi-Fi 時代の幕開けです.
従って,Audio は NFB の賜と行っても過言ではないでしょう.
4〜50年前には,いかに安定に多量の NFB を掛けるかが,最大の技術的な問題でした.
特に,市販品では,いかに低歪みで大出力かが,その価格を左右し,販売量をも決定する
最重要項目であったためです.
しかし,真空管が Audio 増幅器の主役の座を半導体に奪われた後,
一部,LUXMAN と山水電気を除いて,アマチュアにのみによって,
真空管アンプが造られ,愛用されるようになりました.
アマチュアの自作アンプは販売用ではないため,むやみに低歪みとする必要が無く,
製作の容易さと安定性の問題,さらには聴感上の問題から NFB に対する疑問が
投げかけられてきました.
NFB の功罪についての論争は,三極管と多極管の論争とも深く関わっています.
最近では,裸特性の良い三極管には,NFB は不要か,掛けても少量でよいと言われています.
一方,多極管には今日でも適度な NFB が不可欠です.
NFB の功罪を考えるにあたり,一般増幅器に必要な性能はどの程度でしょうか.
歪み ; 常用レベルの出力時で0.5%以下
ダンピングファクター ; 2〜10
聴感上有害な奇数次の高調波歪みでなければ,1% 以上の歪みでも,
通常は気が付かないでしょうし,ダンピングファクターも 5 以上では
ほとんど気が付かないでしょう.
この程度の性能ならば,三極管を用いれば無帰還でも製作可能です.
ところで,高帰還のアンプは同じような音がすると.昔から言われてきました.
また,色付けのないアンプこそが,真の Hi-Fi アンプと言われます.
同じような音がすることから,一見,高帰還アンプは理想的にも見えますが,
色付けのないアンプを造ることは,現在の技術では不可能です.
それならば,むしろアンプの色付けを楽しもうという,
不逞の輩が出てもおかしくはないでしょう.
かく言う所長もその一人です.
無帰還では,出力管そのものの音が出ますので,出力管を,
とっかえ・ひっかえて,音の変化を楽しみ,少量の NFB を掛け,
自分の,その時々の気分に合わせて使い分けています.
では,どのように NFB を使うかですが,その掛け方には,
局部帰還とオーバーオール帰還,およびその併用があります.
局部帰還には,前段に掛ける場合と,出力管にのみカソード帰還を
掛ける場合がありますが,何れの歪みが大きいかを持って
判断すればよいでしょう.
音質的には帰還アンプですから大差がないように思います.
可聴周波数帯域全域に渡り,位相差0の理想的な負帰還を戻すことは
できないでしょうから,単に安定性の問題のみならず,聴感上からも,
NFB はほどほどにすることが肝要かと思います.
美人に化粧は不要,病人でなければ薬は不要,
ただし,化粧も薬も必要な場合は多々あります.
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