所長おすすめの三極(三結)出力管 欧州編


ここで示す球は,米管同様に,出力的には 1w 程度の球です.
多極管接続では,かなり高出力の球ですが,音質を考えると三結になります.

欧州系の三極管,特に直熱管は相当に高価です.
出力が2Wを超えると,もはや真空管と言うよりも,宝石と間違えそうです.

考えてみれば,これは,当然と言えば当然でしょう.
直熱管全盛期から終末期にかけて,ヨーロッパ全土が,第2次世界大戦の戦場になり,
真空管どころではなく,多くの球は破壊されているはずです.

更に,米国のように統一規格化し,少品種大量生産を行わなかったため,
各独立国どころか,メーカーごとに独自開発と生産を行ったため,
多品種少量生産となり,この総生産数の少なさが,さらに残存数を少なくしてしまいました.

これらの要素が重なり,欧州産の真空管は高価にならざるを得なかったようです.
これに,少量を丁寧に作った欧州管は,その特性の良さと音質で,
音に拘る我が国の第一次オーディオブームに乗って大量に輸入されて,
さらに肝心の欧州で球が枯渇してしまったことで,さらに高価になってしまいました.

その後,韓国と中国の商社が,儲かると見て買い占めたことで,
直熱欧州管は恐ろしいくらいの高価な真空管となってしまいました.

しかし,人気はもっぱら大出力直熱管でしたので,今日的に見れば出力の小さい球の中には,
わずかにお勧めできる直熱管もありますがやはり僅かな品種に限られてしまいます.
従って,ここで主としてお勧めできるのは,傍熱の多極管の三結となります.

ところが,この傍熱多極管の三結が驚きの特性です.
浅野勇氏が,古典三極管に相通じるものがあると,記述していますが,まさにその通りです.
Ep-Ip 特性曲線は,定規で引いたのかと思うくらいの球が,多数あります.
ここでのお勧めはもちろんですが,多極管としてでは無く三結です.
是非とも,これらの球を活用すべきではないかと思います.



ST管(1k〜3k円程度) : EL8(三結) 欧州管の多極管としても小出力管ではないかと思います. 欧州では,音の良い電圧増幅管としてLine Amp にも使われています. 外形は,これ以上小さなST形状の球はありませんので,見ているだけで楽しくなります! ヒーターは 6.3v0.5A,250v20mA で,最大プレート損失は5Wです. ソケットはドイツ独特のサイドコンタクト(P8 タイプ)です. 以前は入手が困難でしたが,現在は再生産品が簡単に安く(\300)入手が出来ます. 小型管の常として,負荷抵抗は 12〜14kΩと高いので, 価格的には 7kΩ2 次側に倍のインピーダンスを繋ぐしか無いでしょう. 三結シングルで 0.8w 程度の出力が見込まれます. ST管(2k〜5k円程度) : AL4(三結) 国内で入手できる欧州管としては最も安い価格に属します. ヒーターは 4v1.75A,250v20mA で,最大プレート損失は9Wです. ソケットはドイツ独特のサイドコンタクト(P8 タイプ)です. Maker 発表に依れば,三結シングルで 7kΩ負荷に対して, 1.1w 程度の出力が見込まれますが,極めて軽い使用になっています. 三結時の Eb-Ip 特性曲線は古典直熱三極管並で,定規で線を引いたようです. 特性はヒーター規格を除けば EL3(N) と同じですが,EL3 はかなり高価です. 4vヒーターは,6.3vと2.5v タップが有れば,3.8v が取れますので,問題有りません LS8A 極めて高価になった古典直熱三極欧州管ですが,唯一手が届く球です. ST 型欧州管独特のスタイルと,ニッケルプレートの美しい球です. 球の規格を知るために,よく米管を引き合いにしますが, 直熱三極管で相当するとして,米国系71A(WE104系) 相当管とされています. ソケットは英国独特の 4P,BF4で,我が国では何故か UF と呼ばれています. シングルで 0.8w 程度の出力が見込まれますので,スピーカの効率が, 93db/W-m くらいあれば,十分活躍できます. 音はまさしく欧州直熱三極管で申し分ありません. 何故,この球が安価なのか(大変嬉しいのですが)極めて疑問です. ML6, ML4 我が国に置いて,一般的には強力な電圧増幅管とされています. しかし,その用法には,出力管としての記載があります. 傍熱三極欧州管は,まさに動作説明に使われる構造図のような電極構造, 中心にカソード,その周りを円筒状のグリッドとプレートといった作りが, 多く見られますが,この両者はどちらかというと米管に近く, 量産性を高めるためか,平板のプレート構造です. ヒーターは 4v,6v(6.3vではありません),プレート損失は 5w です. ソケットは英国独特の 5P,BF5で,あるいは,UF5 です. 7kΩの負荷において,シングルで 0.8w 程度の出力が見込まれます. EL12N EL12 は EL6 と同規格でソケット違いです. EL6 は EL5 を僅かに高感度とした球で,良く似ています. ただ,高感度としたために,特性的には多少悪くなってしまいました. 悪くなったと言っても,6L6(G) などと比べると,桁違いに直線性は良い球です. EL6 は EL5 と同じサイドコンタクト(P8 タイプ)で, EL12(N)のソケットは 独特有の10Pで,EL156と同じ G8A(\300) となっています. EL12 は,欧州で人気があるためか,高価かつ入手難ですが, EL12 の高耐圧版である EL12N はかなり安く入手が出来ます. 音は多少変わりましたが,皆さんよくご存じの,プロ用出力管,EL156 似です. EL156 の高さと直径をを小さくした形状で,まさに EL156 の子供と言った風情です. ヒーターは 6.3v1.2A,最大プレート損失は 18W,250v で,72mA, 三結シングルで 2w 程度の出力が見込まれます. ST管(5k円〜程度) : EL3N(三結) AL4 のヒーターが6.3vとなった球で,その分値段が上がっています. ソケットはドイツ独特のサイドコンタクト(P8 タイプ)です. E2d(三結) 旧ドイツ郵政局規格の球で,長寿命多極通信管です. 本来市販されることの無い球で,郵政局民政化によって放出され, 幸運なことに一般で入手が可能になった,欧州版 WE です. ヒーターは 4v1.5A,最大プレート損失は 10W,250v で,35mA, 三結シングルで 1w 程度の出力が見込まれます. ソケットは独 Post7P と言われるドイツ郵政局規格で極めて特殊です. 中国での再生産品がありますが,値段(\860)もさることながら, どうにもならないくらい不格好なタイト製もありますので注意が必要です. 現在,Siemens ,Valvo,RFT,RWN などが入手可能ですが, Siemens 以外は何故か,信じられないくらい安価です. 本来ならば,相当に高価な球のはずです. EL5(三結) Red Tube と言われる,俗に赤い腹巻き,メタルスプレーを掛けていることで, 結構有名になった,独特形状の ST 型多極管です. 6L6G の欧州版とも言われますが,特性的にはまったく違います. EL5,EL5/375,EL5/425とありますが,国内ではEL5/375が入手が容易で安価です. 375,475 はそれぞれ最大プレート電圧で,時代と共に高耐圧になりました. ヒーターは管名が示す通り,6.3v ですから,使い勝手は良いのですが, ソケットはドイツ独特のサイドコンタクト(P8 タイプ)です. 三結シングルで 2w 程度の出力が見込まれます.
AL4,EL3(N),EL33,EL11 は,ヒーター電圧あるいはソケット形状が異なるだけで,規格はすべて同じです. ただ,EL33 はソケットが USオクタル と言うことでかなり高価です. 欧州管のソケットはいずれも独特で,入手に困られる方も見るでしょう. ソケットを考えて,二の足を踏んでおられる方は,文中の価格をよく見てください. 東京などでは,かなり「ぼったくり」もあるようですが,表示価格で買えます. 掲示板などで連絡をいただければ,購入先はいつでもお知らせします.


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