Amp を製作するときに使う配線材はそれほど気を遣ってこなかったような気がします.
線材自体の問題で発生するノイズや断線などが起こったことはこれまでありません.
問題が発生するのは,配線位置,引き回しですね,それと半田付け部分がほとんどです.
また,
線材の抵抗値が異なれば音質に影響があるかも知れませんが,極端に細い線材では無い限り,
高々 mΩ/m 以下では果たして耳で検知できるかどうかと言ったところでしょう.
ある程度の線径,比抵抗が1mΩ以下の場合では,線材が銅でも鉄であっても,
ブラインドテスト(自称専門家による)をおこなうと,有意差は出ないとの発表があります.
線材のメーカーは世界的に見ても数が知れていますので,その技術力から見ても,
材質的な差は無視できる程度と思います.
そして,線自体の寿命には材質はそれほど影響しないように思います.
これまでに製作した最も古い Amp で 40 年以上経過しましたが,
動作させている限りは,特に問題となるような劣化は線材に関しては見られませんでした.
この最古参 Amp に使ったのは,UL 規格の耐熱電線です.
比較的安価で,オーディオ店でしか入手できないような特殊品ではありません.
6BQ5 シングル終段に使った出力管を,UZ42 に変更したとき,
シャーシはそのままでトランスのみ取り外して再利用しました.
後生大事にこの残骸シャーシを保管,実際は捨てるのが面倒で置いておいただけですが,
製作後 30 年ほど経過後にやっと分別処分をするため,線材を取り外しました.
なんと,耐熱電線とは言え,半田付けをした近くは勿論ですが,
熱を加えていなかったはずの部分でさえも若干硬化してもろくなっていました.
何か問題を起こすほどの劣化ではありませんが,見た目はあまり良くありません.
外観ではなく問題は導線本体で,被覆中の導線は酸化変色し,半田付けもできなくなっていました.
特に劣悪な環境に放置したわけではありません.
半田を溶かすと,半田の付いていた部分で融けた半田が周りの線材へは乗らなかったのです.
線材が酸化しているから当たり前ですけどね.
表面の酸化は見た目だけでなく,再利用時にはかなり問題です.
配線替えをしなければ,導線表面の酸化は音質等には
それほど問題にはならないかも知れません.
今はもうほとんど無いと思いますが,ゴム系の被覆の場合は最長 20 年程度しか保ちません.
被覆材質は購入時にしっかりと確認をしないといけません.
長期間にわたり劣化の少なかった線材は,紙巻きガラス繊維被覆電線です.
この種類の線材は,ジャンク屋で購入した NHK 放出機器に使われていました.
民放の放出品には一般線材が使われている場合もあり,
こちらは劣化がかなり見られましたが,
紙巻きガラス繊維被覆電線には,全く劣化が見られませんでした.
そこで,何とかこの線材を入手しようとしましたが,一般の電線屋にはなく,
やむなく,研究資材を扱っている専門業者に依頼して入手しました.
この線材は,初代 PX4s に使いましたが,つい先だって残骸シャーシに付いてた電線を
調べてみましたが,40 年を経過しても全く劣化は見られませんでした.
勿論,半田付けを行った付近も全く変化無しです.
湿度の高い我が国では,導線と被覆の間の密着度・接触などが影響をしているとしか思えません.
紙とガラス繊維の被覆材はおそらく外気との空気の流通が良いために,
毛細管現象で進入した水分が長時間接触面にとどまらないなどが影響をしているのかもしれません.
これは単なる推測で調査・測定をした結果ではありません.
この経験からすると,耐熱合成樹脂製の線材は最長 30〜40 年程度が寿命と考えるのが無難です.
つまり,やはり寿命と考えるべきかもしれません.
結局,線材は,新しければ新しいほどよいといえます.
線材よりも,問題なのは半田付けです.
半田付けには,便利なヤニ入り糸半田を使ってきましたが,このヤニがくせ者です.
無ければ上手く半田が乗りませんので必要不可欠です.
ところが,昔のヤニは,今日で廻っているものとは品質が異なり,
単に半田付けをしたままで放置すると,このヤニの残りが結構悪さをします.
10 年もすると半田付け部分が腐食を起こします.
現在,市販されている国産の糸半田は,昔の,特に輸入品に多く見られる,
問題を引き起こすものとは異なり,高品質で腐食を起こさないように配慮されています.
これは,輸入品が悪いのではなく,昔の技術レベルの低さが問題なのです.
どうしても古い糸半田を使わなければならない場合は,
必ず半田を十分に加熱をしてヤニを燃やしきることと,
半田付け後,アルコールで十分に洗浄をする必要があります.
しかし,こんなやっかいなことをする意味はありません.
糸半田は安いものですから,新しい品を購入すべきでしょう.
また,銀線には銀入り半田を使えと言いますが,
銅線には銅入り半田を使っても同じことですが,科学的に全く意味がありません.
ここでは説明が難しくなりますので省きますが,意味が無いことの理由が知りたい方は,
溶接の専門家,職人さんではありませんよ,に聞けば詳しく拡散作用について教えてくれます.
従って,通常の半田を使った場合と何ら変わりませんので念のため.
あっ,違いがありました,値段です,何ら科学的には変わらないけど,値段だけは馬鹿高いです.
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