あまり見かけることの無い全波整流管です.
傍熱管であり,ヒーターとカソードが絶縁されています.
しかも両カソードが個別に引き出されていて,
しかもカソードとヒーターの耐圧が高く設定されています.
この特性を使えば倍電圧全波整流が可能です.
実に用途の広い整流管です.
米管で言えば,6BY5G(GT)と同じで,現在不人気な新型電源トランス,
B電源が倍電圧用に設定されているトランスが真空管整流で使えます.
ヒーターは 6.3v,2.5Aです.
電流容量は 400v 入力で 175mA あり,ステレオ構成でも
シングル動作ならば 1本で十分 B 電源を供給できます.
EL12N
EYY13
しかも,ヒーターが 6.3v ですから,整流管用の 5v 端子も不要です.
最も,ここまでして使う意味があるの,と言われそうです.
実際,真空管整流で B 電源を倍電圧で作られた Amp なんてあまり見かけません.
特殊な整流管ですから,今流行のように差し替えて楽しむこともままなりません.
では,何故こんな球を取り上げたかというと,それはこの球の形状にその理由があります.
欧州系の出力管に EL12 が有り,やはり米管とは違った音が出ることで結構人気があります.
この EL12 の旧管は ST 管で,EL5 あるいは EL6 と同じですが,
この新型管 EL12N は写真の通り,全く形状が異なります.
欧州管のなかで,レコードのカッティングマシンに使われたことで,
有名になった EL156 がありますが.EL12N の新型管は形状がこれと似ています.
また,ソケットはどちらも同じ G8A と称する特殊タイプで,
EL12N は謂わばミニ EL156 と言ったところです.
EL156 はあまりにも高価でとてもじゃないけど購入出来ませんが,
EL12N ならば価格もそこそこで,我々貧乏人でも入手可能です.
故武末一馬氏もこの球を使われ,結構良いと書いています.
そこで,この EL12Nに形状的にマッチする整流管が EYY13 となります.
出力管 EL12N を2 本と 整流管 EYY13 を並べると見事に形状は一致します.
問題はこの整流管,あまり大量には出回っていませんので,
入手をすることはなかなか大変です.
しかし, EL12N を使うとなれば,どうしても並べてみたくなる球です.
有ればの話ですが,価格は現在 \3000〜\4000 程度でしょう.
ものが無い割には値段はさほど高くはありません.
真空管雑感 -- 電圧増幅管・整流管へ
真空管雑感へ
ホームへ