80 は米国系の整流管で,最も多用されてきた球でしょう.
写真は東芝製です.
古くは 245 と共に 1930年代初めに発表された 280 ですが,
残念ながら手持ちはありません.
80 の形状は ST14 型で,同じ ST14 の 45 は勿論のこと,
ST16 の 2A3 や 46, 47 をはじめ,42, 6F6-G, 6V6-G などの
傍熱管などにもマッチする,使い勝手の良い整流管です.
規格は,5v 2A のヒーターで,125mA (350v 入力)が
コンデンサ入力で取り出せます.
後に,5Y3 へと発展しますが,ST 管の形状から 80
は結構人気があります.
最近は品不足からか値段が上がり,\2000 を超える場合も
多々見受けられます.
寿命の短い整流管ですから,もう少し安く入手できると
良いのですが・・・.
ところで,最も人気のある整流管と言えば,WE-274A, B と言っても
異存のある方はあまり見えないでしょう.
人気に比例して,その値段はとんでもなく高く,購入する気力さえ失せてしまいます.
まぁ,元々定価自体は WE-300B や WE-310A と同じですので,高くて当たり前?
かも知れません.40 年前の定価は 1 万数千円,現在は約 $400 (米 WE ) です.
WE-274A, B の特徴は,電極固定用の上部マイカ形状と電極構造にあることは,
何方もご存じのことと思います.
上部マイカは,WE 独特の三角おむすび状で,電極構造は,
5Z3 や5R4-G などのようにプレートのカシメが内側ではなく,外側にあることです.
80 の話題なのに何故 274B ナノ?
実は今を去ること 30 数年前,80 で人気のあった球があります.
その理由は 274A, B と同じ電極構造を持つ球のため,ミニ 274A と模擬されたためです.
さすがに,電極固定用の上部マイカ形状はおむすびではありません.
勿論,この球に関して,音質的な議論をすることはありませんでしたし,
また,当然のこととして,すべきではありません.
ただ,構造は見た目 WE274A とよく似ていると言うだけです.
単なる遊び心です.
左:Tungsol
右:NEC
この電極構造は,WE と交流のあった NEC 製の 80 や 5Y3GT の一部にもあります.
このあたりの状況が,ミニ 274A と,もて囃された原因の一つかも知れません.
両プレート間隔は,当然の事ながら近づきますので,放熱の面からは,
望ましいとは言えませんが,見た目重視です.
しかし,この構造の球の寿命が短いという噂は聞いたことがありませんので,
あまり放熱の影響はないのかもしれません.
80 ではほんの一部の球ですが,すべてこの電極構造の
球として有名になったのが 5X3 です.
電気的な特性は 80, 5Y3 と同じと言われています.
プレートの大きさは 80 と同じか,若干小さめです.
従って,80 の一族と見なしましょう.
残念なことに,価格面から見ると,5X3 はかなり高価です.
この 5X3 に関しては,国外で買うよりも,
国内の流通価格の方が低いようです.
安いうちに入手しておくのも良いかもしれません.
そして,WE-293A や WE-350B のシングルアンプなどの整流管に使うのも一興かなぁ.
はたまた,300B に使う高価な 274B の代わりに,日常使いにするのも良いかな.
出力管の 1/2 〜 1/3 の寿命ですからね,整流管は.
最も,ここまで見た目に拘ることもないとも思いますし,馬鹿馬鹿しいことですが,
貧乏人のちょっとしたお遊びとしてお許し願います.
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