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MIllard 製



巷ではMullard 製真空管は音がよいとして高値で取引がされています.
この会社は設立から短期間は真空管製造工場を持っていたようですが,
Philips 子会社化の後には主にPhilipsから球の供給を受けていました.
この高音質の噂はどうやら雑誌で誰かが宣伝をしたことが原因のようです.

そう言えば、昔は所長も定期的に雑誌は2種取っていました。
最近は信用ができない製作者が出てきたため,
雑誌類を購入しなくなりました,まぁ,内容の割には高価であることも理由です.

ところで,所長もこのMullard製をわずかですが持っていますので,
音はどうなのかよりも,本当にMullard製なのかが心配になりました.
何たって,最近は偽物ばやりですからねぇ.
しかも,Mullardはほとんど生産をしていないはずですからね.

出張続きの日々,出先ではNetくらいしか楽しみがありません.
たまには酔っぱらっていない(多少ですが)日もあります.
そこで,英国とドイツの球 Freak のサイトを調べてみました.
ひとまず,球の下,袴近くに製造国あるいは製造工場名が記載されていることと,
その List を発見しました.

それによると,2〜3行で記載されていて,
第1行目,球の名称記号が2文字,通常の製品名ではありません.
続いて1文字の Change Code と称する,製造用の記号ですが,製造時管理用のようです.

第2行目,各1文字で製造国/製造工場,製造年,製造月,週を示しているようです.
調べると,どうやら手持ちは Mullard の Blackburn 工場生産のようです.
やれやれ,どうやら本物かいな,と胸をなで下ろしました.

ここでやめときゃ良かったのですが,つい,さらに調べてしまいました.

1956年当時,Mullard にはよく知られているように,
松下(National名)製造の球がPhilips経由でMullard に納められていますが,
何と,東芝,日立からも納められています.
他を見ると,Tungusuram(ハンガリー)をはじめ,スペイン,イタリア,
インド,アルゼンチン,ベネズエラ,ポーランド,チリ,ブラジル,
ペルーが製造国としてあげられています.
もちろん,ロシアも大量に入っています.

こんなにたくさんの国から納入させていたのかと驚きます.
それに,この時期にインドや南米でも真空管作ってたのかとも思いました.
本当かいな?と当然疑問もわいてきます.

ここのところの事情は他の欧州メーカーも似たり寄ったりなんでしょうね.

さらに調べると,Mullard製 12AX7 には プレートに長いタイプと短いタイプがあり,
長いタイプは 1970 年以降の製造とのことでした???.
1970 年には Mullard は真空管製造から撤退したはずなのにどういうこと?
しかも、対象にあげた球の製造工場が Blackburn 工場とくればなおさらです.

意味がわからず,狐に包まれたようです.
そこで,その疑問について考えてみて,ふと,単語の意味の解釈は大丈夫かなと気づきました.
早速,手持ちの Oxford 大辞典,大きくて重くて,
通常とても引っ張り出す気がしませんが,取り出して調べてみました.

manufacture = 製造する,と単純に解釈していましたが,
produce,workup と言う意味もあるようです.
つまり,その工場で名称を印刷すれば当然で,
単に検査して出荷されていれば,manufacture なんですねぇ.
これで前述の疑問,1970年以降の Blackburn 工場 manufacture が解決しました.
やっぱり作っていなかったのですねぇ.がっかりです。
結論から言えば,どこで造られた球かは今となっては判別不能です.

自分の無知を棚に上げて何ですが,なんだか騙された気がしないでもないですね.
手持ちの球が Mullard の Blackburn 工場製造品と思いましたが,
どうやら,製造 Code があっても,そうとは限らないようです.
なければ,当たり前ですが,運が良ければ,ロシア製か東欧製です.
球に印刷されたメーカー名が全く信用できないことは周知のことです.

そう言えば,某東欧製の球ですが,仕切を入れた大きな段ボールの箱に入れられて,
全く何も印字されていない球が出回っていたことを思い出しました.
これを検査して出荷すれば,その工場製になるのですね.
GZ32 も電極をよく見れば、Philips は当然として Telefunken も同じものがあります。
当然かも知れませんが,某東欧製とも全く同じです.
詐欺・まやかしとは勿論言えませんが,どうにも納得できない気分です.

肝心の音ですが,事実を知って聴くと,他のメーカーとの差が解らなくなってしまいました.
40年以上前から球を見てきましたが,如何に印刷がいい加減かがよく解りました.
まぁ,こんなものでしょうかねぇ.




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