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真空管の品質



昔,1930年代くらいまでは,すべての真空管が貴重品で,尚且つ高価でした.
従って,生産数も少なく,中には手作りに近い球さえあったようです.

ところが,時代と共に,というか,第2次世界大戦勃発と共に,
通信機器の大量使用が必要とされ,それに伴い,真空管も大量に製造され始めました.
いつの世もそうですが,大量に作れば,どうしても,粗製乱造にならざるを得ません.
ちょうど,真空管で言えば,GT管,MT管時代に重なります.

一般ラジオ用(HiFi)なら故障すれば交換することで事足ります.
しかし,戦闘中に通信が途絶える,これは致命的な敗北も有り得ますから,
どうしても品質管理が不可欠になります.

そこで出てきたのが,真空管の品質管理とその表示です.
一般用,通信機器用,高度な信頼性の必要な特殊用途用などです.

当初,一般用は勿論特別な表示はありません,通信機器用用はメーカーにより名称が異なります.
我が国では,通則用(東芝,日立,NEC)あるいは工業用(松下),
その他では,Hi-Sと称していたように思います.

一般用は,時代と共に,Hi-Fi用途表示(ラジオ用)されましたが,
内容はまさしく一般用=HiFi,最も安い消耗品の品質でした.
謂わば単なる宣伝文句としての表示です.

製造は,一般用(HiFi用)と通則用は同じで,真空管の製造材料も共通です.
違いは,製造後の測定と,品質検査だけで,より厳しい基準,
ノイズレベル,各種特性のばらつきなどの基準を通過した球を,通測用として供給しました.
HiFi用ラジオ用など一般市販用は,家庭での使用もあり,誰にでもどこでも販売しましたから,
定価が箱に印刷されてる場合がほとんどでした.

通測用は特殊ルートにての販売ですから,定価を箱に印刷しないのが普通です.
庶民には売らないというと語弊がありますが,実際にはそれに近かったと思います.
価格も当然一般用のHiFi管よりも高価です.

通測用と通信用を混同される方も中には有りますが,これは全く異なります.
通信用は,長期間の使用が出来るように,定格をかなり落とし,
一般用が寿命3000hといわれるのに対し,寿命10000hが普通でした.
有名な球では,WE101,WE205,WE310,我が国では,CZ501などですね,
これは手に入れば一生ものと言われます.
くれぐれもお間違いのないように.

最後の特殊用途管,これは高信頼管です.
この球は,製造ラインも,また,真空管製造材料も,一般HiFi用や通測用とは全く異なります.
高信頼管は同じ特性と言っても全くの別物です.
特殊な機器,軍用とか医療用とか,とにかく特別な真空管です.

国内では,高信頼管と表示されますが,国際的には品名の後ろにWがつきます.
例を挙げると,12AW7W,それ以外には,5691,5692,5693といった表示です.
Telefunken などの欧州管には別な表記もありました.
ECC83の一般HiFi用に対して,E83CCのような表示がされていました.

これらは一般用HiFi管の価格の数倍もする高価な球でした.

ただし,これらの表示が信頼できるのは,せいぜい1980年(昭和55年)までの球です.
それ以降はどうなったかと言うと,球の製造が開発途上国へ移動し,
Philips,Mullardをはじめ,皆OEM製品を供給しましたので,
品質はかなり,もっと言えば,信用できないレベルになってしまいました.
中には,松下や東芝までがPhilipsへOEM供給をしていましたので,
それらに当たればいずれの品質においても,問題ないと思います.

1980年代になると,雨後の竹の子のごとく,
怪しいディストリビュータ,弱小商社が設立され,
名ばかりの工場で品名だけを印刷るような商社が出てきてしまいました.
一般品に,さも通信管や高信頼管の名称を勝手に印刷し始めてしまいました.
しかも,有名メーカーの名前を騙る悪徳業者までいました.


最近は,我が国に近い某国など,名称は全く無関係に使われています.
W表示があろうと,4桁数字表記であろうと,はたまた,E83CCなどと印刷されていても,
全く普通の一般用の球と考えた方が賢明です.

ところで,
こんな実情もご存じない方には,HiFi用が最も高品位と思っているという,
笑えない冗談がまかり通っているような話さえあります.
HiFi 用は全くの一般用で,決して特別に Low-Noiseなどではありません.
ラジオ用では格好が悪かろうとのことで,HiFi用としただけです.
単に音響機器にも使えます,との意味で,あれは売らんがなとの宣伝文句です.

Mullardが1970年代で管球製造をやめても,
あたかも作っているような宣伝をする悪徳商社と同じですね.





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