リスニングルーム，なんという甘美で，浮き世の憂さや辛さすらも忘れさせるくらいの言葉でしょう．
何時の日か，自分にもそのような部屋でのんびりと余裕の日を送れたら，
そう願いながら長年生きてきました．
学生時代は6畳一間の部屋で，何とか仕事に就いてからは狭い1DKの公団アパート，
嫁を貰っても2LDKの公団アパート，リスニングルームどころか，スピーカを置く場所もありませんでした．
初任給三ヶ月分のアンプ，4ヶ月分のテープデッキ，これらもただ置いておくだけでした．
仕事に忙殺され自宅に帰るのも深夜，朝は学生よりも早く出勤しなければ仕事になりません，
ほとんど音楽を聴いてリラックスするなど出来る状況ではありませんでした．
ただ，日々を生きていくのが精一杯の生活でした．
その頃は，雑誌を見るくらいがせいぜいで，機械屋ですが，
MJ，ラ技，電波技術や電波科学は欠かさず見ていました．
当初は，立ち読みで間に合わない時にはやむなく自費購入，
しかし，これらの雑誌は図書館にあることが解り，購入はやめました．
雑誌は禁帯出ですが，数日ならば，校外に持ち出さなければ自室で見ることが出来ることが判明,
以降はこの特権をフルに享受しました．
アンプやスピーカを作る時間的な余裕など有るはずもありませんので，関心はもっぱら，
雑誌にそれぞれ載っている，製作記事と諸氏のリスニングルーム紹介を眺めるだけでした．
で，リスニングルームですが，MJ，最初はまずこちらに度肝を抜かれました．
とにかく当時の私には，知る限りの最高品が列挙された豪華な部屋でした．
こんな部屋で酒でも飲みながら音楽を聴ければ幸せだろうなと思いました．
一方，ラ技はどちらかというと，昔からの技術畑の方々が，自分で納得のいくような部屋作り，音創り，
そのための機器作り，そこにはクラフトマンシップ溢れる雰囲気がありました．
MJのリスニングルームは，これは今でも変わらずそうだと思いますが，
じっくりと見ていますと，金にあかした，成金趣味の域を出ていないように思います．
科学知識，電気工学，音響工学，制御理論にも乏しい(失礼)，これまで何を勉強してきたの？，
そう聞きたくなるような販売店の人の言いなりになって見栄だけを張ったのかな(ごめんなさい)，
そうとしか思えないような高額の機器を並べた部屋だけが毎号出てきます．
確かに，凄い！，憧れの機器が並んでいる!，初めは今に自分も，と思いました．
どこかに憧れの心があったと思います．
忙しいはずの仕事の合間に，昔はたくさんあったオーディオショップで高額機器をよく試聴をしていました．
しかし，何度も音楽や再生音を聞いていますと，中には高いだけでちっとも良いとは思えない機器が出てきます．
それらの機器に対する評論家？？による評価は皆，べた褒めでした．
音は好みですから人それぞれだし，それで良いし，そうあるべきと思いますが，
どう聞いても，これは何だかなぁ，と思った機器が結構リスニングルームの記事に出てきています．
耳をつんざくような音量にしなければ出てこない低音，
よく聞いていると，それって倍音ばっかりじゃないの？，基音が無いように聞こえる低音，
確かによく出ているけれど，これどんな楽器なのと思うような耳障りな高音，
でも，価格は信じられないくらい高価なんですねぇ，
あんな機器で本当に毎日音楽を聴いて，楽しんだろうか，休まるんだろうか，
どう考えても疑りたくなってしまいます．
最も，それで満足ならば他人がとやかく言うべきではないでしょうけど．
まぁ，思いかえせば，MJは昔から，関東近辺業者の提灯持ちではありましたけどね．
MJで制作記事に出る真空管などのパーツや論評される機器は，
大量入荷や売れなくて溜まった在庫処理のためだとはよく言われてましたから．
あっ，故浅野氏は別ですよ，彼は自分の作るアンプの球やトランスは自分で購入してたそうです．
だから，あのような記事が書けたんでしょうねぇ．
横道にそれましたが，
何10年も雑誌を見ていますと，その編集方針は自ずと見えてきます．
販売店の宣伝でしかないリスニングルームではねぇ．
結局，面白く，且つ，参考になるのはラ技のリスニングルームでした．
すべてを良しとしているわけではありません，少なくとも昔は面白かったと思います．
もちろん，復刻版ですが，すべてリスニングルーム関係は揃え読みました．
読めば読むほど，皆さん音と音楽を求めて悪銭奮闘，そして楽しんでいる様が見えます．
オーディオマニアはかくあるべし！！，
でもねぇ，ラ技にも最近は変な著者(I.A.日本式にはAI)も現れてきましたから，
一度に彼の歪率計は校正すべきですよ，さもなければあれじゃ詐欺ですよ，
訴えて記述物をすべて回収させたいくらい，まったく，この先どうなるやらです．
楽しみだったリスニングルームの記事もなくなりましたしねぇ．
時々出たかともうと，MJ誌と一緒で，販売店の提灯持ち記事ばっかりです．
一通り，暴言を並べて憂さ晴らしをしましたが，我が身を振り返れば，なんたるさま，
人様のことを悪し様に言ってる場合か，と言わざるを得ませんぇ．
残り少ない我が人生，果たして先輩諸氏のごとく，
納得のいくリスニングルームにて音楽を聴けるのだろうかと思うと情けなくなります．
ステレオ 7setのSP，mono 2set，28台のAmp，小変更で差し替えできる約70種の出力管，
とりあえずはこれらを気分良く聞くことですね．
そして，残りの機器の整備をすることです．
何とか，家族のご機嫌を取りつつ，日々精進有るのみ，でしょうか．
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