Amp を自作していますと,当然のことながら出てくる歪みの問題を避けて通れません.
真空管アンプの場合も,真空管固有のノイズ,特性の非直線性による歪みなど,数多くあります.
低ひずみを求めると,どうしても負帰還を使わざるを得ません.
自作初期には高調波歪み率が0.1%以下を目指し,20dBを超える負帰還を掛けていました.
当然,低ひずみ発振器,2台のデジボル,100MHz のシンクロ,歪率計は必須です.
いずれも高価でおいそれとは買えません,オーディオブームが去ってきて,
ようやく中古品が出まわりましたので,掘り出し物を見つけて買い集めました.
揃うまでは,電気工学科へ出向いて拝借していました.
ところが,ようやく測定器が手に入ると,何と負帰還を卒業することになりました.
測定器は役には立ちますが,must からadvantage か benefit へ格下げです.
無帰還になっても,これが一筋縄ではいきません.
低ひずみになれば,本来ならば音質は向上するはず?,ですが,実際に聞いてみるとそう単純にはいきません.
負帰還アンプは確かに残留ノイズは小さい,しかし,一聴では解りませんが,
聞いていると音が薄っぺらい,爽やかさが物足りない,音楽の心地よさが感じられない.
私には,無帰還アンプが合っているようで最も良い音に聞こえます.
そこで,作るアンプはどうしても無帰還アンプになってしまいます.
無帰還は極めて作り易く簡単,測定も確認をする程度で済みます.
良いことずくめのようですが,一つ,ハム雑音だけが厄介です.
B 電源と,直熱管の場合はヒーターハムです.
傍熱管ならば,ヒーターハムはほとんど出ませんが,直熱管はそうはいきません.
ヒーターハムは,ヒーター電圧が4V以下ならば,
ハムバランサーで支障がない程度に追い込むことが可能ですが,
5V以上になると直流点火を考えなければなりません.
ところが,直流点火は菅の寿命が短くなるとの風評があります.
聞くところでは,直流点火では,+側と−側でヒーター電圧分の電圧差が有り,
エミッションに差が出来るためとも言われています.
困ったことに,直熱管は一般的に高価で入手も困難です.
貧乏人ではおいそれと補修用の予備菅を買えません,出来る限り長持ちをさせるしかありません.
そこで,7.5v菅でも交流点火,盛大なハムは何とか120Hz(当地の交流は60Hz)のみを,
帰還させて低減させますが,欧州の Net 上の回路では,
あまり効果が無いと M 取締役から情報を頂きました.ありません.
もう一工夫が必要なようですが,しかし,旨く使えば,実用上支障がない程度になりそうです.
B電源のハム,これは意外に簡単です,ただし設計段階ではですが.
電源トランスの巻線抵抗,整流管の内部抵抗と入口コンデンサーで,
昔から使われているリップル低減チャートで,リップル率が解ります.
ここで問題は,整流管の制約によって,入口コンデンサー容量が大きく取れません.
古典管で4μF 以下(例;5R4G)なんてことになると,
どう頑張ってもB電源のハムは取りきれません.
実際には,これにプラスして,LC によるフィルターを使います.
チョークコイルの効果は抜群です,しかも,
チョークコイル後に設置するコンデンサーにはかなり大容量を使えます.
と言っても,リップル低減が最低でも0.001以下位に設計しなければ,
低内部抵抗である3極管では盛大なハム?に悩まされてしまいます.
真空管が安く入手できていた時代には,5R4G で 20μF,5Y3 で 100μF なんて作りました.
ただでさえ過酷な動作の整流管に,まさに無謀な使用法でした.
数年で整流管がオシャカは当然の帰着です.
安く豊富に整流管が入手ができれば,この手法もアリですが,
今となってはとても無理な方法です.
出力管並に品不足となっては,現在は,とてもそんな使い方は出来ません,
なんと言っても,整流管が手に入りません.
不安を抱えながら,中国製も使いますが,惚けるだけならともかく,
何時放電するか不安で,これは出力管にもダメージを与えてしまいます.
入口コンデンサー容量が制限されますので,残るは LC フィルターしかありません.
戦前の先達が言っていたように,ハムが出たらインダクタンスを増やす,
が正解かもしれません.
ところがこのチョークコイルが結構高価,もっとも制限以上に電流を流さなければ,
故障はあまりないことが強みです.
やはり,皆さん同じと見えて,10H 以上になると,そうおいそれと買えません.
まぁ,貧乏なのが原因ですけど・・・.
π型フィルーターはチャートを使って設計すれば良いのですが,
意外と面倒,そこで,私は,聴感上の経験から,
簡単な値を目安にしています,が,これはあくまでも個人的目安ですのでご注意を.
L(H)x(入口+出口)コンデンサー容量(μF)x出力管内部抵抗(kΩ) > 400
かなり古い電源トランスでも,国産は結構内部巻線抵抗が低いので無視をします,
これが 200 程度になると,15 インチウーハーからは,やはりハムが出ます.
100 以下では,16cm の P610(40Hz〜13kHz) でも結構耳に付きます.
整流管では無く,半導体整流でも結構当てはまります.
内部抵抗が数Ωですから,相当に大きなコンデンサーが必要になります.
必要電流が小さく,B 電源タップが高圧ならば,RC でも作りますが,
1H を 1kΩで置き換えて構想をします.
これまで作ってきたアンプは,交流点火である 12As 以外は,ハムはほとんど気にかかりません.
1626s と 5687 & 12AU7s はチョークコイルを省き 2kΩ〜5kΩの抵抗で代用です.
出力管の内部抵抗が高ければ,しかも,傍熱管ならば実に簡単です.
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